研究概要

村上グループは、外部刺激応答性ナノ材料を用いて、新しい細胞工学手法と難病治療のためのドラッグデリバリーシステム開発を目指して研究を行っています。

半導体性単層カーボンナノチューブは、近赤外光照射下、活性酸素種を産生して癌細胞を死滅させ(J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 17862‒17865)、重金属イオン配位ナフタロシアニン二量体は、そのユニークな構造により、持続性の高い光線温熱効果を示す近赤外光色素となります(ACS Nano 2013, 7, 8908‒8916)。また私たちは、細胞工学手法として、フラーレン誘導体の長寿命電荷分離状態を利用して細胞膜電位を光制御することや(J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 6092‒6095)、細胞の極めて局所を加熱するシステムを、金ナノロッドと近赤外レーザーを用いて開発することにも成功しました(ACSNano 2014, 8, 7370‒7376)。これらのいずれの場合においても、遺伝子組換え、化学修飾された高比重リポ蛋白質(HDL) (Biotechnol. J. 2012, 7, 762‒767)は、近赤外光応答性ナノ材料の分散安定化、毒性軽減、部位特異的デリバリーを可能にする重要なナノ材料であることがわかりました。

HDLは主に脂質結合性の血清蛋白質apoA-Iとリン脂質から構成されるナノ材料であり、私たちの体の中でコレステロールの逆輸送を担っています。このことからHDLは良いコレステロールとされています。近年の研究から、より広範なHDLの機能が解明されており、HDLはグルコース代謝促進やマイクロRNA輸送にも関与することがわかっています。私たちは、国内外の医学、薬学研究グループ(京都大学、ETH Zürich)と共同で、蛋白質工学手法を駆使してHDLを利用したドラッグキャリアも開発しています。

関連リンク